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ネットワンシステムズの「クラウド戦略」を聞く!(1):アマゾン型とグーグル型

 
月, 2010-03-01 13:41
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特集
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ネットワンシステムズの「クラウド戦略」を聞く!(1)

話題を呼び、いよいよ普及期を迎えた「クラウド・コンピューティング」ビジネスに備えて、大手の「ネットワークインテグレータ」であるネットワンシステムズ(株)は「ニュー・プラットフォーム・イネーブラー(New Platform Enabler)」へと脱皮、新しいビジネス戦略を打ち出した。ニュー・プラットフォーム・イネーブラーとは「ネットワーク技術と仮想化技術を駆使し、クラウド・コンピューティング環境を実現する、新しいプラットフォームを構築する事業者」のことである。ここでは、同社の企画担当の取締役である荒井 透(あらい とおる)氏に、まず、アマゾン型とグーグル型の違いをはじめ、クラウド・コンピューティングの現状を整理していただきながら、2009年10月に発足しクラウドの共通APIづくりに乗り出した「クラウド・ビジネス・アライアンス」の活動をお聞きした。さらに、2010年4月から米国ブロケード社との間でスタートする「バーチャル・クラウド・ラボ(VCL)」なども含めて、同社のクラウド・ビジネス戦略を語っていただいた。今回は、クラウド・コンピューティング登場の背景や、アマゾン型とグーグル型の違いなどを中心にお聞きした(文中敬称略)

ネットワンシステムズの「クラウド戦略」を聞く!
第1回:アマゾン型クラウドとグーグル型クラウドの違い

≪1≫クラウド・ビジネスを強化するネットワンシステムズ

■ クラウド時代を迎えて、御社(ネットワンシステムズ)は、会社の業容を「ネットワークインテグレータ」から「ニュー・プラットフォーム・イネーブラー」と進化させ、イメージアップさせていますね。そこで、まず、最初にネットワンシステムズのプロフィールを簡単にご紹介いただけますか。

荒井 ネットワンシステムズ(以下、「ネットワン」と略す)は、表1に示すように、1988年に設立されましたが、当時でも珍しいコンピュータ・ネットワーク専業の会社でした。この会社は三菱商事と米国のネットワーク機器専門メーカーのアンガマン・バス社との合弁でスタートしました。そもそもネットワンシステムズの「ネットワン(NetOne)」とはアンガマン・バス社の製品(Net/Oneシリーズ)の登録商標で、そこから名前の由来が来ています。

当時、イーサネットがこれから普及するという時代で、IBMのトークンリングをはじめいろいろなネットワークが混在している中で、イーサネットを主体に異機種間を接続するネットワーク・ビジネスを展開することとしました。しかし、アンガマン・バス社の製品だけではお客様の要望をすべてカバーできないので、いろいろな会社の製品をインテグレーションしようということになり、1989年にシスコとの契約をしました。インターネットという起爆剤の効果もあり、シスコを中心としたビジネスが急激に伸び、順調に成長を続けてきて今日に至っています。その間、欧米を中心にいろいろなベンダーの製品を取り扱いラインナップも充実させてきました。


表1 ネットワンシステムズの会社概要
社名ネットワンシステムズ株式会社 Net One Systems Co., Ltd.
設立1988年(昭和63年)2月1日
資本金122億79百万円(2009年3月31日現在)
社員数(単体)1,408人 (連結)1,764人(2009年3月31日現在)
事業内容ネットワークインテグレーション事業:
ネットワークコンサルティング/ ネットワーク設計・管理/ ネットワーク設備の設置・工事/ネットワーク機器の販売/ネットワークコンピューティング・サービス/運用支援サービス/教育サービス
売上高(連結)1,311億19百万円(2009年3月期)

■ ところで最近は、ネットワークと言うよりも、プラットフォームとかクラウドなどへのビジネスの展開が活発化していますね。

荒井 そうですね。シスコなどもネットワーク機器に加えてサーバ・ビジネスに進出していますが、当社も時代の流れをとらえて、ネットワーク主体の事業分野から、サーバやストレージ、またそれらの仮想化なども含むプラットフォームの分野まで広げて、ビジネスを展開しています。

■ なるほど。


≪2≫クラウド・コンピューティングが登場した背景

荒井 最近の流れとして、シスコなどは、ユニファイド・コンピューティング・システム(UCS:Cisco Unified Computing System)などのサーバー・シリーズを出し始めました。そこで、なぜそのような新しい動きが出てきているかという背景を、図1を見ながら、簡単にご説明しましょう。


図1 コンピューティング・アーキテクチャの視点から見たクラウド・コンピューティング環境への変化(クリックで拡大)
図1 コンピューティング・アーキテクチャの視点から見たクラウド・コンピューティング環境への変化

図1は、コンピューティングの方法(コンピューティング・アーキテクチャ)の視点から見た、従来の方式と最近のクラウド・コンピューティング環境の違いを示しています。

荒井 透氏〔ネットワンシステムズ(株)企画担当取締役〕
荒井 透氏
〔ネットワンシステムズ(株)
企画担当取締役〕

 

図1の①の並列コンピューティングというのは、1台のコンピュータの中に多くのCPU(マルチCPU)を採用し、これらのCPUを並列に並べて高速演算を実現する仕組みです。これは図1の①のように、複数のCPUを内部バス(バックプレーン)を介して、メモリとストレージを接続して高速化を実現しています。例えば、スーパーコンピュータがその例です。

図1の②に示すグリッド・コンピューティングは、ネットワークで網の目(グリッド)のように接続された複数のコンピュータ間で高速演算を実現する仕組みです。これは、図1の②に示すように、CPUとメモリ/ストレージを内部バス(バックプレーン)を介して接続し、外部のネットワークとは高速LANを経由して接続する構成です。

従来は、イーサネットの伝送速度よりもパソコンやサーバ内の内部バス(バックプレーン)のほうが速かったとか、あるいはファイバ・チャネル(Fibre Channel)といわれるストレージ・アクセス用のネットワークのほうが速かったのです。しかし、昨今、10ギガ(10Gbps)という高速なイーサネット規格が標準化され普及してきたことによって、パソコンやサーバの内部バスよりもイーサネットのほうが速くて、安く、簡単に使えるようになってきたというように、時代が変わってきました。

■ おっしゃる通りですね。最近では、さらに高速な40Gbps/100Gbpsのイーサネット規格の標準化も進んでいますね。

荒井 そうです。そのような背景もあり、

(1)ネットワーク上にCPUやメモリ、ストレージ(ディスク)が距離に関係なく個々に分散的に接続されている状態と、

(2)パソコンやサーバ単体の中の状態(1台のコンピュータの中にCPUやメモリ、ストレージがバックプレーンで接続されている状態)

は、実はほぼ同じ環境になってきているのです。ということは、極端に言いますと、例えば北海道にあるCPUと沖縄にあるメモリ、そして東京にあるストレージを高速なネットワークでつないだ状態でも、「仮想的」には1台のコンピュータに見えてしまうということなのです。

■ なるほど。そのように、高速なネットワークを使用してCPUやメモリ、ストレージを物理的な距離に依存しないで、柔軟にコンピュータ・システムを構成することを「仮想化技術」というのですか。

荒井 透氏〔ネットワンシステムズ(株)企画担当取締役〕
荒井 透氏
〔ネットワンシステムズ(株)
企画担当取締役〕

 

荒井 そうです。1台のコンピュータ上で複数台の仮想コンピュータを動かすことも仮想化技術ですが、ここでお話したような、複数のコンピューティング要素を束ねて一つの仮想コンピュータとすることも仮想化技術の一つです。ここでは、図1の③に示すように、複数台のマルチCPUのコンピュータをお互いに高速ネットワークで接続し、あたかも1台のコンピュータ(あるいは1台のサーバ)であるかのように見せています。クラウド・コンピューティング環境とは、そのような仮想化技術を使用したコンピュータ環境とも言えるのです。すなわち、図1の③下の右側に示すように、クラウド・コンピューティング環境のアーキテクチャ(構成)とは、

(1)仮想化技術を使用すること
(2)高速な1Gbps/10Gbpsのイーサネットを使用するこ
(3)ネットワーク経由でリソース(CPU、メモリ、ストレージ等)を一元管理すること

などで実現されているのです。

■ なるほど。

荒井 今日時点では、「クラウド」という言葉はまだ明確には定義されておらず、意味するところが非常に広い用語ですが、以上お話ししたようなことがクラウドのはしり(ベース)になっているのです。そして、なぜ今クラウドがこの時期に急に出てきたかという背景には、ネットワークがどんどん高速化し、拡張していっていることが大きな要因なのです。このような、クラウド・コンピューティング環境のもとで、ユーザーは必要なソフトやアプリケーションを、好きなときに、好きなように使えるようになるのです。


≪3≫アマゾン型クラウドとグーグル型クラウドの違い

■ わかりました。ところで、御社のクラウドの講演などで、よくアマゾン型クラウドとかグーグル型クラウドとかというお話がありますが、両者はどのように違うのか、簡単に説明していただけますか。


図2 クラウド技術の分類:アマゾン型とグーグル型(クリックで拡大)
図2 クラウド技術の分類:アマゾン型とグーグル型

〔1〕アマゾン型クラウド:VMware/Xen

荒井 図2を見てください。クラウド技術の分類をわかりやすくするために、少々乱暴ではありますが、アマゾン型とグーグル型と表現しています。要するに、表2に示す仮想化ソフトであるVMware(ヴイエムウェア)やXen(ゼン)に代表されるような、1台の物理サーバ上で、複数台の仮想サーバを稼働させ、CPUやメモリの利用効率を高めるやり方をアマゾン型と呼ばせていただいています。これが現在話題となっている仮想化のトレンド技術ですね。

〔2〕グーグル型クラウド:Hadoop

そこに対して、複数台の物理サーバで同時に分散処理を行うクラウド技術を、グーグル型と分類しています。グーグル型(分散ファイルシステム)は、表1に示すHadoop(ハドゥープ)のような、オープンソースの分散処理プラットフォーム(分散ファイルシステム)を使用します。このグーグル型の場合は、簡単にいえば高性能なマシンである必要はなくて、安くてもよいからマシン(コンピュータ)をたくさん集めてきて、それらを分散して管理し使用するという発想になっているのです。


表2 VMware、Xen、Hadoopの特徴
用 語内 容
VMwareコンピュータの仮想化ソフトを製造・販売する、米国の会社名であり、またその仮想化ソフト製品の総称のこと。
1台のサーバ(あるいはパソコン)上で、複数台のOS(例:WindowsやLinux 、FreeBSD等)を同時に実行できるソフトウェア。サーバ管理が集中できるので、管理コストの削減やハードの保守/設置スペースの削減が可能となる。
Xen1台のコンピュータ上に複数のOSを同時に動作させることができるシトリックス社の仮想化ソフト。英国ケンブリッジ大学の研究プロジェクトで開発されオープンソースをベースにしている。複数のサーバによって提供されているサービスを、物理的に1台のサーバに集約できるため、サーバーの台数を減らすことが可能になり、管理コストや運用コストの削減が可能。
HadoopHadoopとは,大規模のデータを手軽に複数のマシンに分散して処理できる、ASF(Apache Software Foundation)によって開発されたオープンソースのプラットフォームである。 Hadoopにおけるデータ分散処理のベースとなっているのはMapReduceである。MapReduceは、そのGoogleの分散処理システムであり、 Googleの検索技術を支えるコア技術となっている。

■ 安価なコンピュータ(パソコン)でもいいわけですか。

荒井 はい。例えばWebアプリケーションの場合のレスポンス(応答)でしたら、安価なコンピュータ(パソコン)のCPU程度でも十分いいレスポンスをします。つまり、データベースと関係しない、大量のデータを検索するようなシンプルな処理の場合は、よいレスポンスをするのです。するとハードウエアのコストはかなり押さえられますね。そういうような発想の違いがありますので、アマゾン型とグーグル型を大胆に切り分けています。両者は、将来的には適材適所に使用されていくと思います。

すなわち、データベースや検索などの処理の場合はアマゾン型と言われるような高機能サーバ群を集めて使用する方向にいくでしょうし、例えばWebのフロントエンド(ユーザーに近い動作環境)ですとか、データを一時蓄積するためのキャッシュ・サーバですとかというように汎用的に使われるようなものはグーグル型のような安いもので十分なわけです。

■ そうすると、アマゾン型とグーグル方は共存していくという環境もあるのですね。

荒井 はい。共存していくと思います。現在は、アマゾン型が大手企業では主流ですが、Hadoop(ハドゥープ、表2)が出てきましたので、将来的にはグーグル型のほうにシフトしていって、アマゾン型とハイブリッドになって進化していくのではないかと思います。

(つづく)


プロフィール

荒井 透氏(現職:ネットワンシステムズ株式会社 取締役)

荒井 透(あらい とおる)氏

現職:
ネットワンシステムズ株式会社 取締役

【略歴】
1981年 芝浦工業大学卒。菱電エレベータ施設株式会社を経て
1983年 入所した、文部省 高エネルギー物理学研究所(現 大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構)データ処理センターにてネットワークに携わる。
1988年 三菱商事よりネットワーク機器専門メーカーのアンガマン・バス株式会社に出向。
1990年 ネットワンシステムズ株式会社へ転籍。ネットワーク応用技術部長、商品戦略室部長、事業統轄室長 兼 広告宣伝室長、ネットワークテクノロジー本部長等を経て、
2006年6月 取締役に就任。現在は経営企画グループとシステム企画グループを担当。また、最新の技術動向調査や商品発掘を行う米国現地法人Net One Systems USA, Inc. のPresident & CEOも務めている。

著作(共著)に『マスタリングTCP/IP 入門編』がある。


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