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スマートグリッドを実現する802.15.4g(SUN)の標準化動向を聞く!:第4回 802.15.4g(SUN)のMAC層

 
火, 2010-02-02 15:41
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特集
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スマートグリッドを実現する802.15.4g(SUN)の標準化動向を聞く!:第4回 802.15.4g(SUN)に対応するMAC層

世界各国でスマートグリッド(次世代電力網)への取り組みが活発化し、多彩な標準化が推進されているが、現在、「IEEE 802.15.4g」で行われているSUN(Smart Utility Networks)の標準化は、スマートグリッドを実現する通信規格のひとつとして大きな注目を集めている。そこで、このIEEE 802.15.4gに参加し積極的に標準化活動を推進されている、NICTの新世代ワイヤレス研究センターの児島史秀(こじまふみひで)氏(ユビキタスモバイルグループ 主任研究員)に、標準化の現状をお聞きした。IEEE 802.15.4gは、半径数100メートル~数キロメートル程度(後述のとおり、各リージョンにおける仕様において異なる)の範囲の地域において、複数の各ホームネットワーク〔スマートメーター部分を窓口とする〕からの情報を電力会社やガス会社の情報収集局(制御センター)に集約し、双方向に制御できること、またZigBee等に比べ消費電力を大幅な低減を目指していることなど、スマートグリッド時代の無線ネットワークとして期待されている。
今回(第4回)は、第1回「802.15.4g(SUN)がめざす標準」、第2回「802.15.4gでの審議内容と日本からの提案」、第3回「3つの変調方式の違い」に続いて、ZigBee(TG4)とSUNの違いや、802.15.4g(SUN)に対応するMAC層を中心にお聞きした(文中敬称略)。
〔NICT:National Institute of Information and Communications Technology、独立行政法人 情報通信研究機構〕

スマートグリッドを実現する802.15.4g(SUN)の標準化動向を聞く!
第4回 802.15.4g(SUN)に対応するMAC層


≪1≫ZigBee(TG4)とSUN(TG4g)の関係

■ 次に、ZigBeeとSUN(802.15.4g)の関係をお聞きしたいのですが。イメージなんですが、ZigBeeは屋内の無線センサーネットワークのような感じで、802.15.4g(SUN)はスマートメーター用なので、屋外の地域的な無線ネットワークのような感じがするんですね。

児島 まず定義からいいますと、ZigBeeは、802.15.4規格(物理層/MAC層)をベースにしてZigBeeアライアンスがそのうえに、ネットワーク層とアプリケーション層を策定したものを総称してZigBeeというのが正しい定義だと思うのです。しかし、狭義のZigBeeの定義はそうですけれど、広義の定義としては15.4規格そのものをZigBeeと呼ぶ場合もあるかと思います。

そこで、基本的には15.4規格の物理層をスマートグリッド用に変更した仕様をつくるというのが、それが15.4gなのです。第1回の図3に示したスコープ(標準化の範囲)にもありましたけれども、例えば伝送速度として最大1Mbpsまでを考えつつ、かつ1500オクテットのデータまで対応する、物理層にそうした変更を加えたものが15.4gなのです。

■ そうすると、今802.15のWPANとしては、100メートル以内のところにZigBeeがあって、それはどちらかというと室内とかビルのオフィス用であって、それを広域的に拡張するのが15.4gという理解でよろしいのでしょうか。

児島史秀氏(NICT新世代ワイヤレス研究センター主任研究員)
児島史秀氏
(NICT新世代ワイヤレス
研究センター主任研究員)

児島 そうですね。802.15.4gの場合は必要に応じて広域的にも対応できるような仕様にして、かつZigBeeよりも低消費電力化・低コスト化を実現するような変更が求められると思います。

■ そうすると、例えば室内用にZigBeeという規格があって、さらに802.15.4g(SUN)という規格が出てきたとき、802.15.4gを室内に使うということはないのですか。

児島 802.15.4gは、先ほど説明しましたように基本的にはアウトドア(屋外用)ですが、第1回の図4で示したようにマンションのような場合には室内としても使用しますので、室内用に使用する場合も私たちは想定しています。ただ、通常の一般住宅の部屋の中で802.15.4g(SUN)をどのように使うか(すべてZigBeeに任せるのか)ということは、まだ考えられていない状況です。

■ わかりました。


≪2≫802.15.4g(SUN)に対応するMAC層の仕組みと特徴

児島 次に、802.15.4g(SUN)という物理層に対応するMAC(Medium Access Control、媒体アクセス制御)は何をするかというお話をしましょう。現在、私たちが提案しているのは、低消費電力型のMAC、これは「ロングライフ(長寿命)型MAC」とも呼ばれます。図8の下の絵を見てください。これは、基本的に802.15.4において標準化されているMACなのです。802.15.4のMAC仕組みは図8に示すように、まずビーコン(Beacon、ネットワークの基本的な情報を端末に報知する制御情報)信号が、コーディネータから端末(デバイス)に定期的に送られるわけです〔コーディネータ:新規デバイスのPAN(近距離通信網:ZigBee)への参入を受け付ける機能を持つデバイス(FFD:Full Function Device、フル機能デバイス)。無線LANのアクセス・ポイントのような役割をするデバイス。〕。


図8 ロングライフ(長寿命)型MACプロトコルの仕組み(1)(クリックで拡大)
図8 ロングライフ(長寿命)型MACプロトコルの仕組み(1)

図8のBI(Beacon Interval、ビーコン区間)に対して、黄色いで示すCAP(Contention Access Period、通信可能期間)という時間区間がありますが、この区間が、端末が通信できる期間なのです。そのCAPの後に、次のビーコン(緑色)までのCAPではない区間(Inactive Period)が、それがスリープの区間なのです。スリープ区間(休止区間)というのは、端末の省電力化などを実現するために、接続関連情報を維持したまま送受信を一時的に中断する動作のことです。

■ なるほど。

児島 これが、802.15.4のMACの基本的な仕組みなのですが、私たちは、例えばこのMACを改造して、ビーコンを定期的に出さないようにする仕組みを考えています。その理由は、定期的にビーコンを出すのは電力的にもったいないからなのです。

■ 図8の「Beacon:Could be Turn Off」(ビーコンの中止)というところですか。

児島史秀氏(NICT新世代ワイヤレス研究センター主任研究員)
児島史秀氏
(NICT新世代ワイヤレス
研究センター主任研究員)

児島 そういうことです。それをやりながら、もう1つはうすい青いブロックがデータ(Data Frame)を示しているのですが、これがCAPの途中から右にはみ出していますよね。これは、本来はあり得ないことなのです。要するに通信は必ずCAPの中でやって、それが終わったらみんなで寝ちゃいましょう(スリープする)、というのが従来の802.15.4のルールだからです。それに対して、私たちはデータがあったときにはデータが終わるまで起き続けて聞きましょう(通信をやめないでデータを送受信しましょう)、という仕組みを提案しているのです。

■ 聞き続けるということは、スリープ(休止)しないということですから、電力を食うということになりませんか。

児島 はいそうなります。しかし食うことになりますが、逆にいうと普段から極端に短いCAPをつくることができるわけです。もっというと、データが流れているとき、今まではCAPの中で端末はみんな起きて聞いていたのです、「あ、だれだれにデータが届いているな」と聞いていたのですが、今回そのCAPを短くすると、そのデータを受け取る人だけが聞き続けて、他の端末は「だれだれにデータが来ているな。ただし、自分宛てではないし、自分はCAPが終わったから寝てしまおう」というふうに、他の端末はすべてその区間は電力を消費しないように休止してしまう」、というようなことを提案しています。

つまり、従来では、自分宛てではないデータの場合も、端末はすべてのデータフレームの全体を受信する動作(既定の電力消費が発生する)が必要とされていましたが、本提案では、自分宛てではないフレームの場合には、フレームの受信を行わなくてよいことになるため、消費電力の減少を実現できるのです(フレームが自分宛てであるかどうかを判断するために、フレームの先頭の一部は受信する必要がある。ただし、従来のように、フレーム全体を受信する場合と比べて消費電力は小さくなる)。

■ そのような仕組みで消費電力を少なくするのですね。

児島 そうです。そのようなMACを、2009年の5月に、前述した802.15.4eというタスク・グループに提案しているのです。

■ 了解しました。

児島 ところで、話が前後してしまって恐縮ですが、802.15.4のMACというのは大きく分けて2種類あるのです。1つはビーコン(制御信号)を使うMACで、TDMA(時分割多元接続)に近いMACです。もう1つはビーコンなしのMACで、これはCSMA(搬送波感知多元接続)を使ったMACといえます。

第2回の図6に示した、日本企業グループから提案しているSFF(Short Frame FSK)提案では、MACに①ビーコンありMACと、②ビーコンなしMACという2つの提案を行っていまして、、前者については前出の図8に示したのとおりで、後者についても同様に、それぞれ無駄な送信、受信を行わないことで消費電力を節約するMACを提案しています。

--つづく--


プロフィール

児島 史秀(独立行政法人情報通信研究機構新世代ワイヤレス研究センター主任研究員)

児島 史秀(こじま ふみひで)氏

現職:
独立行政法人情報通信研究機構新世代ワイヤレス研究センター主任研究員

【略歴】
1999年、大阪大学大学院工学研究科博士後期課程修了。
同年、郵政省通信総合研究所入所。
以来、ITS通信技術、防災アドホックネットワーク技術に従事。
現在、独立行政法人情報通信研究機構 新世代ワイヤレス研究センター ユビキタスモバイルグループにてIEEE 802.15.TG4gの標準化活動、ならびに特定小電力システムの高度利用に関する研究開発に従事。
IEEE会員、電子情報通信学会会員、IEEE 802.15および11WG投票メンバー。



バックナンバー

≪スマートグリッドを実現する802.15.4g(SUN)の標準化動向を聞く!≫

第1回:802.15.4g(SUN)がめざす標準とは?

第2回:802.15.4gでの審議内容と日本からの提案

第3回:3つの変調方式の違い

第4回:802.15.4g(SUN)に対応するMAC層


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バックナンバー

≪ スマートグリッドを実現する802.15.4g(SUN)の標準化動向を聞く!≫

第1回:802.15.4g(SUN)がめざす標準とは?
第2回:802.15.4gでの審議内容と日本からの提案
第3回:3つの変調方式の違い
第4回:802.15.4g(SUN)に対応するMAC層
第5回(最終回):NICTのSUNモジュールの試作品と実証実験

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